濃厚でなめらかなマスカルポーネクリームに、ほろ苦いコーヒーとココア。ティラミスはカフェやレストランで食べるイメージが強いかもしれませんが、基本の作り方は意外なほどシンプルです。
しかもオーブンで焼く必要がなく、材料を混ぜて重ね、冷蔵庫で冷やすのが基本。お菓子作りに慣れていない人でも挑戦しやすいデザートです。
一方で、「マスカルポーネはどう混ぜればいい?」「ビスケットにはどれくらいコーヒーを染み込ませる?」「生クリームは必要?」「お酒なしでも作れる?」など、初めて作ると細かな疑問も出てきます。
そこでこの記事では、ティラミスの基本レシピと作り方を、材料選びから下準備、クリームの作り方、重ね方、冷やし方まで順番にわかりやすく解説します。
さらに、クリームがゆるくなる原因や、生卵を使う場合の注意点など、初めて作る人が迷いやすいポイントもまとめました。
難しい専門用語はできるだけ使いません。基本を一つずつ押さえながら、自宅でティラミス作りを楽しんでみてください。
ティラミス作りに必要な基本の材料と道具
基本のティラミスに使う材料一覧
ティラミスは見た目こそ華やかですが、実は使う材料がそれほど多くないお菓子です。基本となるのは、マスカルポーネ、卵、砂糖、サヴォイアルディ、コーヒー、ココアパウダーです。イタリア料理アカデミーが紹介しているティラミスでも、冷ましたコーヒーを染み込ませたサヴォイアルディに、卵と砂糖を合わせたマスカルポーネクリームを重ね、ココアをかける作り方が紹介されています。
家庭で作りやすい分量としては、4〜6人分を目安に次の材料を用意するとよいでしょう。
| 材料 | 目安量 |
|---|---|
| マスカルポーネ | 250g |
| 卵黄 | 2個分 |
| 砂糖 | 50g |
| サヴォイアルディ | 12〜16本程度 |
| 濃いめのコーヒー | 150〜200ml |
| 純ココアパウダー | 適量 |
ここで紹介する分量は「これだけが正解」というものではありません。ティラミスにはさまざまな配合があり、卵黄だけを使うレシピもあれば、泡立てた卵白を加えるもの、生クリームを加えるものもあります。
初めて作る場合は、材料を増やしすぎないことがポイントです。特にマスカルポーネの濃厚さ、コーヒーの苦味、砂糖の甘さ、ココアの香りがそろえば、ティラミスらしい味に仕上がります。まずは基本の組み合わせを覚え、その後で甘さやクリームの軽さを自分好みに調整すると失敗しにくくなります。
マスカルポーネはティラミスの味を決める重要な材料
ティラミスを作るときに中心となる材料がマスカルポーネです。マスカルポーネは乳脂肪の豊かな、やわらかくなめらかなチーズで、強い塩味や酸味が少ないため、デザートにも使いやすいのが特徴です。ティラミスでは、このまろやかなコクがコーヒーの苦味やココアの香りを包み込みます。
クリームチーズでもティラミス風のデザートは作れますが、味は少し変わります。クリームチーズはマスカルポーネより酸味やチーズらしい風味を感じやすいため、仕上がりがさっぱりした印象になりやすいからです。基本のティラミスらしい味を知りたいなら、まずはマスカルポーネを使うのがおすすめです。
扱うときに気をつけたいのが混ぜ方です。冷蔵庫から出したばかりのマスカルポーネは少しかたく感じることがありますが、だからといって勢いよく長時間かき混ぜる必要はありません。イタリア料理アカデミーの資料でも、マスカルポーネは強く泡立てるのではなく、やさしく混ぜ合わせる作り方が紹介されています。
ボウルの中で軽くほぐし、卵黄と砂糖を合わせた生地になじませていけば十分です。なめらかでツヤのあるクリームになれば成功と考えてよいでしょう。
ティラミスは材料が少ないぶん、それぞれの味が仕上がりに出やすいお菓子です。スーパーなどで数種類のマスカルポーネが並んでいる場合は、まずプレーンタイプを選び、最初は香料などが加えられていないものから試してみると基本の味をつかみやすくなります。
サヴォイアルディがない場合は何を使えばいい?
ティラミスの土台としてよく使われるのが、細長い形をしたサヴォイアルディです。英語圏ではレディフィンガーと呼ばれることもある、軽く乾いた食感のビスケットです。コーヒーを吸わせても完全に崩れにくく、クリームとの間にほどよい食感を残してくれるため、ティラミスと相性のよい材料です。
イタリアの辞書Treccaniでも、伝統的なティラミスについて、冷ましたコーヒーを染み込ませたサヴォイアルディとマスカルポーネクリームを重ねた菓子と説明されています。
ただし、日本のスーパーではサヴォイアルディを扱っていない場合もあります。その場合は、市販のスポンジケーキやカステラ、甘さが強すぎないビスケットなどで代用できます。
スポンジケーキを使う場合は、1〜2cm程度の厚さに切るとクリームと重ねやすくなります。ただしスポンジはサヴォイアルディより水分を吸いやすいため、コーヒーをたっぷりかけるとベチャッとしやすい点には注意してください。
カステラは手に入りやすい反面、もともと甘いため、クリームに加える砂糖を少し控えると全体のバランスが取りやすくなります。
ビスケットを使う場合は、油脂や香料が強すぎないシンプルなものが向いています。
代用品でも十分おいしく作れますが、初めて本来のティラミスらしい食感を体験したい場合は、輸入食品店や製菓材料店などでサヴォイアルディを探してみるのもおすすめです。
コーヒーとココアはどんなものを選ぶ?
ティラミスの味を引き締めてくれるのが、コーヒーとココアです。クリーム部分はマスカルポーネと砂糖によって濃厚でまろやかな味になるため、コーヒーにある程度の苦味があると、甘さとのバランスがよくなります。
本場の雰囲気に近づけたい場合は、エスプレッソのような濃いコーヒーが向いています。ただし、家庭にエスプレッソマシンがなくても問題ありません。ドリップコーヒーをいつもより濃いめにいれたり、インスタントコーヒーを濃いめに溶かしたりすれば十分作れます。
大切なのは、コーヒーを熱いまま使わないことです。熱いコーヒーをビスケットに含ませ、そのままクリームと重ねると、マスカルポーネクリームがやわらかくなりすぎる原因になります。イタリア料理アカデミーのレシピでも、コーヒーは作ったあとに冷ましてから使用しています。
ココアは、砂糖やミルクが入っていない純ココアを使うのがおすすめです。甘い調整ココアを使うと、ティラミス全体が必要以上に甘くなることがあります。
仕上げに純ココアを薄く振ると、最初のひと口ではほろ苦さが広がり、そのあとマスカルポーネの甘く濃厚な味が続きます。この苦味と甘味の差こそ、ティラミスのおいしさを感じやすいポイントです。
ティラミス作りで用意しておきたい道具
ティラミスはオーブンを使わずに作れるため、大がかりな製菓道具は必要ありません。最低限用意しておきたいのは、ボウル、泡立て器、ゴムベラ、コーヒーを入れる容器、ティラミスを組み立てる保存容器、ココアを振るための茶こしや小さなふるいです。
卵黄と砂糖をしっかり混ぜるため、泡立て器はあると便利です。手動でも作れますが、電動ハンドミキサーを持っている場合は短時間で均一に混ぜられます。ただし、マスカルポーネを加えたあとは強く混ぜすぎないよう注意しましょう。
ゴムベラは、ボウルの底や側面についたクリームまできれいにすくえるため便利です。また、マスカルポーネをやさしく混ぜ合わせるときにも使いやすい道具です。
容器は透明なガラス製を使うと、横からクリームとビスケットの層が見えるので、ティラミスらしい見た目を楽しめます。もちろん、保存容器や深めの皿でも問題ありません。
さらに、できあがったティラミスを冷蔵庫に入れるため、容器に合うふたや食品用ラップも用意しておきましょう。
作り始めてから道具を探すと、その間にクリームが温まったり、作業が止まったりします。材料だけでなく道具まで最初に並べておくと、作業が驚くほどスムーズになります。
ティラミスを作る前に済ませておきたい下準備
コーヒーを作ってしっかり冷ましておく
ティラミス作りで意外と忘れやすいのが、コーヒーを先に用意しておくことです。クリームを作ってからコーヒーをいれると、熱いコーヒーが冷めるまで作業を止めなければなりません。そのため、最初に150〜200mlほどの濃いコーヒーを作り、ボウルや浅い容器に移して冷ましておくとスムーズです。
コーヒーは室温程度まで下がれば使えます。急いでいる場合は、コーヒーを入れた容器の底を氷水に当てて冷やす方法もあります。ただし、氷を直接コーヒーに大量に入れると味が薄まるため、濃さを保ちたい場合は外側から冷やすほうが使いやすいでしょう。
なぜ冷ます必要があるのかというと、ティラミスのクリームは熱に弱いからです。温かいビスケットをマスカルポーネクリームと重ねると、クリームがゆるくなり、きれいな層を保ちにくくなります。
さらに、熱いコーヒーは乾いたサヴォイアルディに一気に染み込みやすく、必要以上にふやけることがあります。
イタリア料理アカデミーのティラミスの作り方でも、最初にコーヒーを作り、それを冷ましてからサヴォイアルディに使用しています。
「コーヒーを作るだけだから後でいい」と考えず、ティラミス作りでは最初の工程として準備しておくことが、きれいな仕上がりにつながります。
マスカルポーネを扱いやすい状態に整える
マスカルポーネは基本的に冷蔵保存されているため、冷蔵庫から出した直後は少しかたく感じることがあります。とはいえ、長時間室温に置いてやわらかくする必要はありません。ティラミスは加熱せずに食べることが多いお菓子なので、衛生面を考えても必要以上に常温放置しないことが大切です。
作業を始める少し前に冷蔵庫から出し、スプーンやゴムベラで軽くほぐしておけば十分です。
ポイントは、マスカルポーネそのものを勢いよく泡立てないことです。なめらかにしようとして長時間混ぜ続けるより、卵黄と砂糖を合わせた生地に少しずつ加えながらなじませたほうが扱いやすくなります。
特に電動ミキサーを使う場合は注意が必要です。卵黄と砂糖を混ぜる段階では便利ですが、マスカルポーネを加えたあとは低速にするか、ゴムベラや手動の泡立て器に持ち替えると状態を確認しやすくなります。
また、パックの中に少量の液体が見えることがあります。この場合も慌てず、商品の表示を確認しながら扱いましょう。
お菓子作りでは「材料はすべて室温に戻す」と説明されることがありますが、すべてのレシピに当てはまるわけではありません。ティラミスの場合は、クリームをだれにくくし、衛生的に作業するためにも、マスカルポーネを温めすぎないことが大切です。
卵と砂糖を混ぜる前に知っておきたいポイント
基本的なティラミスでは、卵を加熱せずクリームに使うレシピがあります。そのため、卵の扱いは味以上に大切なポイントです。
まず、ひび割れた卵や長時間室温に置かれていた卵は避け、購入した商品の保存方法と賞味期限を確認してください。厚生労働省は、正常な殻付き卵は新鮮なうちに使用し、生卵や半生卵、それらを含む食品を室温に長時間置かないよう注意を示しています。
また、サルモネラ属菌による食中毒は卵や卵加工品でも報告されています。厚生労働省は、卵を生食する場合は賞味期限内のものを使用し、低温保存や手洗い、調理器具の洗浄などを行うよう案内しています。
ティラミスを作るときは、卵を割ったまま放置せず、割ったらすぐにクリーム作りに使いましょう。卵の殻を触った手でそのまま別の材料や調理器具を触らず、一度手を洗うことも重要です。
今回の基本レシピでは卵黄を使います。ボウルに卵黄を入れ、砂糖を加えたら、色が少し明るくなり、なめらかになるまでよく混ぜます。
生卵を避けたい場合は、加熱殺菌済みの卵製品を利用したレシピや、卵を加熱する作り方を選ぶ方法もあります。特に食べる人の体調や年齢などが気になる場合は、生卵を使わない選択肢も検討しましょう。
材料の温度をそろえると作りやすくなる
ティラミス作りでは「何度にすれば絶対成功する」というほど細かく温度を管理する必要はありません。しかし、熱い材料と冷たい材料を急に合わせないことは大切です。
もっとも注意したいのがコーヒーです。作りたての熱いコーヒーと冷たいマスカルポーネクリームを重ねると、クリームがやわらかくなり、全体がまとまりにくくなります。そのため、コーヒーは必ず冷ましてから使います。
一方、マスカルポーネは冷蔵庫から出した直後に石のようにかたい食品ではありません。軽くほぐせば十分扱えるため、長時間室温に置いて温める必要はありません。
卵も使用する直前まで適切に保存し、作業を始めたら手早く使い切るようにしましょう。
材料の温度を意識する最大の目的は、クリームをなめらかに作り、衛生的に完成させることです。
「すべて室温にしなければいけない」と考えるより、「熱いものをクリームに合わせない」「冷蔵が必要な食品を長時間放置しない」と覚えておくほうがわかりやすいでしょう。
ティラミスは焼き菓子のようにオーブンの温度を細かく調整する必要がない分、材料の状態がそのまま仕上がりに表れます。コーヒーを冷ます、クリームを温めすぎない。この2点だけでも、初心者が失敗する可能性をかなり減らせます。
容器と材料を先に並べておくと失敗しにくい
ティラミスはひとつひとつの工程は難しくありません。しかし、途中で「ココアがない」「容器が冷蔵庫に入らない」「コーヒーをまだ作っていなかった」と気づくと、クリームを室温に置いたまま作業が止まってしまいます。
そこでおすすめなのが、料理でいう「段取り」を先に済ませることです。
まず、冷ましたコーヒー、サヴォイアルディ、マスカルポーネ、卵、砂糖、ココアを作業台にそろえます。冷蔵が必要なものは使う直前まで冷蔵庫に入れておきます。
次に、ティラミスを入れる容器が冷蔵庫に収まるか確認しておきましょう。大きなガラス容器を使ったものの、完成後に冷蔵庫へ入らないという失敗は意外に起こります。
コーヒーを入れる容器は、サヴォイアルディを横にして軽く浸せるくらいの幅があると便利です。
さらに、ココア用の茶こし、クリームを塗るゴムベラ、完成後にかぶせるラップまで用意しておけば、途中で手を止める必要がありません。
お菓子作りでは、レシピを読みながらその場で次の材料を探すより、完成までの流れを一度頭に入れてから始めたほうが失敗しにくくなります。
特にティラミスは冷蔵が必要な食品を扱うため、短時間で組み立てて冷蔵庫へ戻せる準備をしておくことが大切です。
ティラミスの基本レシピを手順どおりに作ってみよう
卵と砂糖でなめらかなクリームのベースを作る
材料と道具がそろったら、まずクリームの土台を作ります。清潔で水気のないボウルに卵黄2個分と砂糖50gを入れ、泡立て器でよく混ぜてください。
最初は黄色が濃く、砂糖のザラザラした感触がありますが、混ぜていくうちに少し色が明るくなり、全体がなめらかになります。砂糖を完全に見えなくすることだけを目標にする必要はありませんが、卵黄と砂糖が均一になっている状態まで混ぜることが大切です。
イタリア料理アカデミーが掲載するティラミスの作り方でも、卵黄と砂糖を泡立て、その後マスカルポーネを合わせる流れが紹介されています。
ここで砂糖を一度に加えて問題ありません。ただし、ボウルの底に砂糖がかたまって残っていると、その後マスカルポーネを加えたときに混ざりにくくなります。泡立て器をボウルの底までしっかり当て、全体を均一にしましょう。
電動ミキサーを使う場合は、必要以上に長く回し続けなくても大丈夫です。卵黄と砂糖が一体になり、少しとろみがつけば次へ進めます。
なお、この基本レシピでは卵黄を加熱せず使用します。使用する卵の表示や保存状態を確認し、割卵後は放置せず作業を進めてください。生卵を避けたい場合は、このレシピをそのまま使わず、加熱する方法や殺菌済み卵を使うレシピを選ぶようにしましょう。
マスカルポーネを加えてクリームを仕上げる
卵黄と砂糖がなめらかに混ざったら、マスカルポーネ250gを加えます。一気に力いっぱい混ぜるのではなく、最初は数回に分けて加えると均一にしやすくなります。
ゴムベラまたは泡立て器を使い、底からすくうように混ぜてください。マスカルポーネの白いかたまりが見えなくなり、全体が淡いクリーム色になれば基本のクリームは完成です。
ここで大切なのは、「たくさん混ぜれば混ぜるほどなめらかになる」と考えないことです。マスカルポーネを加えた後は、必要以上に強く混ぜ続けないほうが扱いやすくなります。イタリア料理アカデミーの別のレシピ資料でも、マスカルポーネは強く泡立てず、やさしく混ぜることが説明されています。
完成したクリームは、スプーンですくったときにゆっくり落ちる程度がひとつの目安です。多少やわらかくても、冷蔵庫で冷やすことで落ち着きます。
ただし、水のように流れるほどゆるい場合は、そのまま重ねると層が作りにくくなります。その場合は一度冷蔵庫で少し冷やし、状態を確認しましょう。
このクリームに生クリームを加えるレシピもありますが、今回は基本のティラミスを覚えることが目的なので加えません。まずマスカルポーネ、卵、砂糖だけで作る濃厚なクリームを味わうと、後からアレンジするときも違いがわかりやすくなります。
ビスケットにコーヒーを染み込ませる
クリームができたら、次はサヴォイアルディにコーヒーを染み込ませます。
冷ましておいたコーヒーを浅めの容器に移し、サヴォイアルディを1本ずつ軽く触れさせます。ポイントは「中まで完全にびしょびしょにする」のではなく、「表面にコーヒーを含ませる」くらいの感覚で作業することです。
サヴォイアルディは乾いているため、液体を想像以上に早く吸収します。長時間コーヒーの中に置くと、持ち上げた瞬間に崩れたり、完成したティラミスの底にコーヒーがたまったりします。
イタリア料理アカデミーの作り方でも、サヴォイアルディをコーヒーに浸しすぎないよう注意することが示されています。
片面をサッとつけて裏返す程度から試し、使用するビスケットの吸水具合を確認するとよいでしょう。
スポンジケーキを使う場合は、さらに注意が必要です。ビスケットのようにコーヒーへ直接浸すのではなく、スプーンや刷毛で少しずつコーヒーをかけたほうが調整しやすくなります。
この工程では、少し控えめに感じる程度でも問題ありません。完成後に冷蔵庫で休ませる間に、クリームの水分やコーヒーが生地全体になじんでいきます。
コーヒーを染み込ませすぎないことが、ティラミスにきれいな層とほどよい食感を残すコツです。
ビスケットとクリームを交互に重ねる
コーヒーを含ませたサヴォイアルディを、用意した容器の底にすき間が少なくなるよう並べます。容器の端に合わない場合は、ビスケットを切って調整してかまいません。
一段目が並んだら、その上にマスカルポーネクリームの半量をのせます。ゴムベラやスプーンの背を使い、ビスケットが見えなくなるよう平らに広げてください。
その上に、再びコーヒーを含ませたサヴォイアルディを並べます。そして残りのクリームをのせ、表面を平らに整えれば組み立てはほぼ完成です。
ティラミスの魅力は、この単純な重なりにあります。Treccaniでも、ティラミスはコーヒーを含ませたサヴォイアルディとマスカルポーネクリームを層にしたデザートとして説明されています。
きれいに作ろうとしてクリームを強く押しつける必要はありません。力を入れすぎると下のビスケットからコーヒーがしみ出したり、クリームが横からあふれたりします。
上からやさしく広げ、ある程度平らになれば十分です。
透明な容器を使っている場合は、横から見るとビスケットとクリームが交互に並び、ティラミスらしい層が見えてきます。
多少曲がっていても味にはほとんど影響しません。家庭で作るティラミスは完璧な直線を目指すより、各層をつぶさず重ねることを意識しましょう。
冷蔵庫で冷やしてココアを振りかける
組み立てた直後のティラミスは、まだクリームとビスケットが別々の状態です。ここから冷蔵庫で休ませることで、コーヒー、クリーム、ビスケットの水分と香りがなじみ、ひとつのデザートらしい一体感が生まれます。
容器にふたをするかラップをかけ、できるだけ早く冷蔵庫へ入れましょう。数時間を目安にしっかり冷やし、食べる直前まで冷蔵保存します。
イタリア料理アカデミーのレシピでも、組み立てたティラミスを冷蔵庫に入れ、提供するまで冷やす手順が紹介されています。
冷えたら、最後に純ココアを茶こしで表面全体に薄く振ります。茶こしをティラミスから少し離し、左右に動かしながら振ると均一になりやすくなります。
ココアは厚く積もらせる必要はありません。クリームの白い部分がうっすら隠れるくらいでも、十分に香りと苦味を感じられます。
切り分ける場合は、包丁をまっすぐ下に入れ、スプーンやケーキサーバーですくいます。やわらかいデザートなので、ケーキのように完璧な形で取り出せなくても問題ありません。
器に盛った瞬間にクリームが少し広がるくらいのやわらかさも、ティラミスらしい魅力のひとつです。
おいしいティラミスに仕上げる5つのコツ
マスカルポーネは混ぜすぎないのがポイント
ティラミスのクリームをなめらかにしようとして、マスカルポーネを長時間混ぜ続けてしまう人は少なくありません。しかし、基本的には材料が均一になった時点で混ぜるのをやめることが大切です。
卵黄と砂糖を十分に合わせてからマスカルポーネを加えれば、それほど強く混ぜなくてもクリームはまとまります。
特にハンドミキサーを高速で使い続けると、状態を確認する前に混ぜすぎてしまうことがあります。そのため、マスカルポーネを加えた後は低速にするか、泡立て器やゴムベラで手混ぜする方法がおすすめです。
イタリア料理アカデミーが公開している別のティラミスレシピでも、マスカルポーネを強く泡立てず、やさしく混ぜるよう説明されています。
「なめらかにする」と「たくさん混ぜる」は同じ意味ではありません。マスカルポーネの白いかたまりがなくなり、卵黄の生地と均一に混ざったところが終了の目安です。
また、クリームが少しやわらかく感じても、冷蔵庫で冷やすと落ち着きます。すぐに固さを出そうとして別の材料を追加するより、まず基本の配合で作り、冷やした後の状態を見るほうが失敗を判断しやすくなります。
ティラミスは繊細そうに見えますが、難しい技術より「必要なところで混ぜるのをやめる」ことが大切なお菓子です。
ビスケットをコーヒーに浸しすぎない
ティラミスを食べたとき、底にコーヒーがたまり、ビスケットがほとんど形を失っていた経験はないでしょうか。これは、コーヒーを染み込ませすぎたときに起こりやすい状態です。
サヴォイアルディは乾燥しているため、短い時間でもコーヒーをよく吸います。表面だけでは足りないように見えても、その後クリームと重ねて冷蔵庫で休ませるうちに内部まで水分がなじんでいきます。
そのため、コーヒーには短時間だけ触れさせるのが基本です。
イタリア料理アカデミーのレシピでも、サヴォイアルディをコーヒーに浸しすぎないよう注意されています。
特に初めて作る場合は、最初の1本を試しに浸してみてください。持ち上げても形がしっかり残り、表面がコーヒー色になっている程度なら、そのまま続けられます。
使用するビスケットによって吸水速度は違うので、「何秒浸す」と決めるより、実際の状態を見るほうが確実です。
スポンジやカステラを代用する場合は、さらに水分を吸いやすいことがあります。コーヒーの中に直接入れず、スプーンや刷毛で少量ずつ付ける方法も有効です。
コーヒーをたっぷり含ませたほうが味が濃くなると思いがちですが、おいしいティラミスに必要なのは「コーヒーの量」ではなく「クリームとのバランス」です。
クリームとビスケットの厚みをそろえる
ティラミスは層を重ねるだけのお菓子ですが、その層のバランスによって食べたときの印象が大きく変わります。
クリームが極端に厚いと、ひと口食べたときにマスカルポーネの味ばかりが強く感じられます。反対にビスケットが多すぎると、ケーキのような食感が強くなり、なめらかなティラミスらしさが弱くなります。
そこで最初は、ビスケット、クリーム、ビスケット、クリームというシンプルな2段構成にすると作りやすくなります。
クリームは最初に半分、最後に残り半分と考えておけば、途中で足りなくなる心配もありません。
容器の角までクリームを広げるときは、力を入れて押し込むのではなく、表面をなでるように広げます。多少の凹凸は最後のココアで目立たなくなるので、完全な平面を作る必要はありません。
また、サヴォイアルディの向きを各段でそろえておくと、切り分けたときに崩れにくくなります。
ティラミスの特徴は、コーヒーの苦味、ビスケットの食感、マスカルポーネクリームのコクを一度に味わえることです。どれかひとつを多くしすぎず、スプーンですくったときに各層が一緒に入る厚さを意識すると、バランスのよい仕上がりになります。
作った直後ではなく冷蔵庫で休ませる
ティラミスは完成した直後にも食べられそうに見えますが、組み立ててすぐの状態と、冷蔵庫で十分に冷やした状態では食感が大きく異なります。
作った直後はビスケットの中心がまだ乾いていたり、クリームとの境目がはっきりしすぎていたりします。冷蔵庫で休ませることで、コーヒーやクリームの水分が少しずつ全体になじみ、スプーンを入れたときに一体感が出てきます。
また、マスカルポーネを使ったクリームも冷えることで落ち着き、作った直後よりすくいやすくなります。
そのため、食べる直前に急いで作るより、数時間前に完成させておくほうがおすすめです。
ただし、生卵を使ったティラミスの場合、長く置けば置くほどおいしくなるわけではありません。完成後は室温に置いたままにせず、速やかに冷蔵庫へ入れましょう。厚生労働省も、生卵や半生卵、それらを含む食品を室温に長時間放置しないよう注意しています。
家庭で作った食品は、市販品のように製造環境や保存試験が管理されているわけではありません。必要な分だけ作り、できるだけ早めに食べ切ることを基本にしましょう。
「冷やす時間」もティラミスを完成させる調理工程のひとつと考えると、作る予定を立てやすくなります。
ココアは食べる直前に振るときれいに仕上がる
ティラミスの表面に広がる茶色いココアは、見た目だけの飾りではありません。濃厚で甘いマスカルポーネクリームにほろ苦さを加え、味を引き締める役割があります。
そのため、できれば砂糖入りの調整ココアではなく、砂糖の入っていない純ココアを使うとティラミスらしい味になります。
ココアを振るタイミングにも少し工夫があります。作ってすぐココアをかけて長時間冷蔵庫に入れておくと、クリームの水分を吸ってココアの表面が湿り、濃い色になっていきます。味に大きな問題があるわけではありませんが、さらさらした美しい仕上がりを楽しみたいなら、食べる少し前に振るのがおすすめです。
茶こしや小さなふるいにココアを入れ、ティラミスの上から薄く均一に振ります。
一度に大量のココアを落とすと、食べたときに粉っぽく感じることがあります。表面が薄く覆われる程度から始め、足りなければ追加してください。
イタリア料理アカデミーのティラミスでも、仕上げにココアパウダーをふるう方法が紹介されています。
白いマスカルポーネクリームの上にココアが広がるだけで、一気にティラミスらしい姿になります。難しい飾り付けが必要ないことも、このお菓子の作りやすさのひとつです。
ティラミス作りでよくある疑問をまとめて解決
ティラミスがゆるくなったときはどうすればいい?
完成したクリームが予想よりゆるいと、「失敗した」と感じるかもしれません。しかし、マスカルポーネを使ったクリームは冷えることで落ち着くため、少しやわらかい程度ならすぐに捨てたり材料を追加したりする必要はありません。
まずは容器に組み立て、冷蔵庫で十分に冷やして状態を確認してみましょう。
ゆるくなる原因として考えられるのは、材料が温まりすぎた、マスカルポーネを必要以上に混ぜた、コーヒーをビスケットに染み込ませすぎた、といった点です。
特にコーヒーの量が多すぎると、冷蔵中に余分な水分がクリーム側に移り、全体がやわらかく感じやすくなります。
また、レシピの材料を自己判断で大きく増減すると、クリームのバランスが変わることがあります。初めて作るときは、まず基本の分量を守ることが近道です。
冷やした後もスプーンですくえないほど液体状の場合は、無理にきれいなケーキ型に切り分けようとせず、グラスなどに盛ってデザートとして楽しむ方法もあります。
ただし、見た目を直すために常温で長時間作業するのは避けてください。特に生卵を使っている場合は、衛生面を優先して冷蔵状態を保つことが大切です。
失敗の原因を確認し、次回は材料を冷たい状態で扱う、マスカルポーネを混ぜすぎない、コーヒーを控えめにするという3点を意識すると改善しやすくなります。
生クリームを入れなくてもティラミスは作れる?
ティラミスのレシピを調べると、生クリームを使うものと使わないものが出てくるため、「どちらが正しいの?」と迷うかもしれません。
結論からいうと、生クリームを入れなくてもティラミスは作れます。
イタリア料理アカデミーが現在掲載しているヴェネト州のティラミスでは、卵黄、砂糖、マスカルポーネでクリームを作り、コーヒーを含ませたサヴォイアルディと重ね、ココアをかけています。少なくともこの作り方では、生クリームは基本材料として使われていません。
生クリームを加えるレシピは、クリームを軽い口当たりにしたい場合や、ボリュームを出したい場合などに便利です。泡立てた生クリームを加えると空気を含むため、マスカルポーネだけの場合よりふんわりした食感になりやすくなります。
一方、生クリームを加えないタイプはマスカルポーネのコクを強く感じやすく、濃厚な味わいになります。
どちらも現在では広く作られているため、優劣ではなく好みの違いと考えるとよいでしょう。
初めてティラミスを作るなら、まず生クリームなしのシンプルな配合を試すと、マスカルポーネ本来の味と基本的な構造がわかりやすくなります。その後、もっと軽い口当たりにしたいと感じたら、生クリームを使うレシピに挑戦するのもひとつの方法です。
お酒を入れなくてもおいしく作れる?
ティラミスにはラム酒、マルサラ酒、ブランデーなどを加えるレシピがあります。そのため、「お酒を入れないと本格的な味にならないのでは」と思う人もいるでしょう。
しかし、ティラミスはお酒なしでも作れます。
実際、イタリア料理アカデミーが掲載するヴェネト州のティラミスでは、コーヒー、卵黄、砂糖、マスカルポーネ、サヴォイアルディ、ココアを使う作り方が紹介されており、掲載されている工程には酒を加える記載がありません。
一方で、同アカデミーの別のレシピ資料にはブランデーやマルサラ酒を使うものもあります。つまり、ティラミスには複数の作り方があり、酒を使う配合も使わない配合も存在します。
お酒を使わない場合でも、濃いコーヒーと純ココアを使えば香りと苦味が加わり、十分にメリハリのある味になります。
逆にお酒を加える場合は、香りが強くなり、大人向けの風味になります。
なお、子どもやアルコールを避けたい人が食べる場合は、「少量だから大丈夫」と自己判断せず、最初から酒類を使わないレシピにするとわかりやすく安心です。
基本のティラミスを作る段階では、お酒は必須材料ではありません。まずはコーヒー、マスカルポーネ、ココアの組み合わせを楽しみ、好みに応じてアレンジするとよいでしょう。
生卵を使う場合に気をつけたいことは?
ティラミスの基本レシピの中には、卵黄や卵白を加熱せず使用するものがあります。そのため、生卵を使う場合は衛生管理を軽く考えないことが重要です。
厚生労働省は、卵やその加工品がサルモネラ属菌による食中毒の原因になることがあると案内しています。また、生卵を食べる場合は賞味期限内のものを使い、低温保存し、手や調理器具をよく洗うことなどが予防策として示されています。
ティラミスを作るときは、卵を使用直前まで適切に冷蔵し、ひび割れた卵は生食用として使わないようにします。卵を割った後は放置せず、すぐクリーム作りを進めましょう。
殻を触った手でゴムベラや保存容器を触り続けることも避け、必要に応じて手を洗います。完成したティラミスも常温に置いたままにせず、すぐ冷蔵してください。
厚生労働省は、生卵や半生卵、それらを含む食品を室温に長時間置かないよう注意しています。
また、生卵を使うことに不安がある場合は、加熱するタイプのクリームや殺菌済み卵製品を使用したレシピを選択できます。
伝統的な作り方を再現することよりも、安全に食べられることのほうが重要です。食べる人に合わせて材料や作り方を選びましょう。
作ったティラミスはいつまでに食べればいい?
手作りティラミスの日持ちは、使用した材料、卵を加熱したかどうか、調理中の衛生状態、冷蔵庫の温度などによって変わるため、「必ず何日大丈夫」と一律に断定することはできません。
特に今回のように加熱していない卵を使う場合は、長期保存を前提にしないことが大切です。
完成したらすぐ冷蔵庫へ入れ、必要な量だけ取り出し、できるだけ早めに食べ切るようにしましょう。
厚生労働省は、卵に関連するサルモネラ対策として低温保存が有効である一方、生卵や半生卵、それらを含む食品を室温に長時間放置しないことなどを示しています。
また、家庭で作ったティラミスには、市販品のように製造日や消費期限を決めるための保存試験が行われているわけではありません。「昨日作ったから大丈夫」「冷蔵庫に入れてあるから何日でも大丈夫」と考えないことが重要です。
食べるときは清潔なスプーンやナイフを使い、食卓に長時間置いた残りを何度も冷蔵庫へ戻すことも避けましょう。
見た目やにおいに異常がある場合はもちろん、保存状態に不安がある場合も食べない判断が必要です。
長く保存したい場合は、卵を使ったクリームの性質もあるため、自己流で判断せず、冷凍保存を前提に設計されたレシピなどを利用するほうが安全です。
まとめ
ティラミスの基本的な作り方は、実はとてもシンプルです。冷ましたコーヒーをサヴォイアルディに含ませ、卵と砂糖を合わせたマスカルポーネクリームと交互に重ね、冷蔵庫で冷やしてからココアを振れば完成します。
オーブンを使わないため、一見すると本格的な見た目のわりに、家庭でも挑戦しやすいデザートです。
おいしく作るために特に覚えておきたいのは、コーヒーを冷ましてから使うこと、サヴォイアルディを浸しすぎないこと、マスカルポーネを必要以上に混ぜすぎないこと、完成後にしっかり冷やすことです。
ティラミスには、生クリームを加えるもの、卵白を泡立てて使うもの、クリームチーズを使うもの、お酒を加えるものなど、数え切れないほどのアレンジがあります。
しかし最初から材料を増やしてしまうと、何がティラミスのおいしさを作っているのかわかりにくくなります。
まずはマスカルポーネ、卵、砂糖、サヴォイアルディ、コーヒー、ココアという基本の組み合わせから作ってみてください。この形を一度覚えてしまえば、甘さを控えたり、生クリームを加えて軽くしたり、抹茶やフルーツを使ったアレンジに挑戦したりするときも考えやすくなります。
そして、生卵を使う場合は味だけでなく衛生管理も大切です。卵は適切に保存し、割った後は速やかに調理し、完成したティラミスはすぐ冷蔵庫に入れましょう。
基本を知ることは、難しい作り方を覚えることではありません。「なぜ冷ますのか」「なぜ浸しすぎないのか」といった理由まで理解しておくことです。それがわかれば、家庭でも自分好みのおいしいティラミスを作れるようになります。
